ずっとあなたが好きでした
翌朝、あっこに「香、目の下くまが出来てるよ?」

葉子ちゃん達にも「香、何か酷い顔だよ。眠れなかった?」と言われて、皆に笑われた。

そう言えば、忘れていた。

今日は班で自由行動だった。

伊藤くんとあっこのラブラブ感を見せつけられるのかと思うとうんざりした。

しょうがないかぁ。

二人共、私の気持ち知らないし…

溜息が出た。

伊藤くんが私に話し掛けてきた。

「おい、お前、朝から何だよ。その溜息は!東京見物の日に溜息なんか尽くなよー!かったるい感がめっちゃ出てっぞ!」

アンタは幸せで良いよ。

もう誰のせいで、溜息尽いてると思ってるの?

この馬鹿!

この鈍感男!

「伊藤くんの馬鹿!」

「馬鹿?お前、低血圧かよ?超機嫌悪いなー。何だよ。厄介だなぁ」

と笑っていた。

厄介なのはどっちよ?

そして、溜息を尽きながら、ホテルの前の集合場所で待っていた。

暫くたっても、担任の山下先生と俊也が来なかった。

深刻な顔をして、二人がようやくやって来た。

まさか…

嫌な予感がした。

山下先生が話し始めた。

「昨日、五組の生徒達が夜中にトイレに行く途中、うちのクラスの矢吹と女子が抱き合ってたのを見たと聞いた。矢吹は自分しかいなかったと言っている。正直、分からん。矢吹と一緒にいた女子は名乗り出ろ!」

多くの女子は

「いやぁー矢吹くんが誰かと抱き合ってたなんて、信じたくないー」

「先生、そんなの嘘に決まってるじゃん。」

「矢吹くんに彼女はいないんだよ。先生、そんなこと有り得ないよー」

「いやぁー私も信じたくない」

「矢吹くん、嘘でしょ?」

女子が騒ぎ出した。

俊也は言った。

「先生、本当に俺一人だったんですよ。本当です。俺トイレに行こうとしただけです。」

「お前は黙ってろ」

「私です!私が昨日失恋して、一人になりたくて、ラウンジにいたんです。そしたら、たまたま通りかかった矢吹くんが慰めてくれたんです。それだけです。矢吹くんは全く悪くないんです。私が悪いんです。本当にすみませんでした。」

他の生徒が、私の話を聞いて、騒ぎ始めた。

「静かにしろ!」

それでも、静まる気配はなく

「静かにしろと言ってるだろ。そうか、そうだったか。分かった。正直に話してくれたし、もう良いぞ。矢吹、班に戻れ。」

山下先生は言い、この事は片付いた。
< 19 / 100 >

この作品をシェア

pagetop