ずっとあなたが好きでした

「私、矢吹くんの野球してる姿好きだったよ。」

「ありがとう。でも、もう出来ねーし、そんな事言っててもしょうがないじゃん。」

「矢吹くん…」

「もう面会時間終わりだから、矢田帰らないと！見舞い、ありがとう！」

私を突き放すように言った。

久々に俊也と話す緊張のあまり、言ってはいけない事を口にしている事は分かっていたけど、止められなかった。

何か話さなきゃいけない、話さなきゃいけないと思えば思うほど、言ってはいけない事を口にしてしまった。

でも、無茶苦茶な事を言ってしまったけど、これが私に出来る精一杯の俊也への励ましの言葉だった。

言われて嬉しい励ましの言葉でもいくつか考えてこれば良かったのかな？

普通の可愛い女の子だったら、何て俊也に言ってあげたんだろう？

あっこだったら…

葉子ちゃんだったら…

麻央ちゃんだったら…

何て言って俊也を励ましてあげたの？

私には出来なかった。

普通の女の子が出来る当たり前の事が、出来なかった。

私の気持ちはこんなに沈んで、暗かったのに、外は夕方だというのに、まだ太陽が沈んでいなくて、物凄く明るかった。

自分の惨めさが余計増していった。

涙も出てこなかった。

何も考えれなかった。

いや、考えたくなかった。

凄い勢いで塾を飛び出したせいもあり、力が抜けていた。

来なければ良かった。

矢吹くんに会わなかったら、矢吹くんに嫌われる事もなかったし、こんな嫌な自分をさらけ出す必要もなかったのに…。

矢吹くんに、あんなに会いたかったけど、これ以上嫌われたくないし、もう会いたくない。

けど、どこかで嫌われて清々しているとこもある。

初めから、矢吹くんと私では、雲泥の差位釣り合ってない事位分かっていた。

私の高望みでしかなくて、雲の上の人を好きになってしまったと思っていた。

とにかく現実味がなかった。

これで、諦めれる。

矢吹くんを好きになり過ぎるのが私は怖い。

好きになり過ぎて、どうしようもなくなってしまったら、私はどうすれば良いの？

どうしようもない気持ちを止めることが出来なくなったら、私はどうなっちゃうんだろう？

怖い。

とにかく怖かった。

諦めれる時に諦めておきたかった。

楽になりたかった。

報われない恋をこれ以上したくなかった。