ずっとあなたが好きでした
けど、実際は短い間にもうどうしようもない位俊也を好きになっていた。

俊也に会いたいと思うと出校日までが長く、会いたくないと思うと出校日までが短く感じた。

出校日の日がきた。

憂鬱だった。

出来る事なら休みたかった。

矢吹くんに会いたくないなぁ…

そう思いながら、学校に向かって歩いていたら、曲がり角から俊也が歩いて来た。

このままでは、東門に入るタイミングが一緒になってしまう。

早く先に歩いて行ってくれないかなぁ…

私は懸命に歩くスピードを遅めてみたり、気付いていない振りを装った。

先に、俊也が東門に入ったけど、俊也は私が来るのを待っていた。

教室までいや最低でも土間までは一緒に行かなくてはいけなかった。

今更、矢吹くんが待ってるの分かってて、西門から入るなんて出来ないし、そしたら、避けてるって丸分かりだしなぁ…

どうしよう。

また、訳分かんない事言って、怒らせちゃうかもしれないし…

逃げたい…

そして、今はもう俊也を想う気持ちが強すぎて、俊也の前で、前みたいに普通に接する事は出来ない気がした。

俊也の顔をまともに見る事なんて出来なくなっていた。

恥ずかしかった。

俊也は夏服の白いシャツが凄く似合っていて、本当にカッコ良かった。

それに比べ、私は…

私はアトピーで顔が凄く荒れていたし、見られたものではなかった。

矢吹くんにこんな姿見られたくない…

ますます逃げたくなった。

俊也との距離がどんどん近付いた。

嫌だ。

本当に嫌だ。

けれど、俊也は

「矢田、おはよ!この前はカッとしちゃってごめん。」

と普通に話し掛けてきた。

私は何か言わなきゃいけないと思い、

「謝る事ないよ。私が訳分からない事言っちゃったから…」

と早々と言って、急いで教室へ行こうとした。

「矢田?そんなに怒ってるの?」

怒ってなんかないよ…

何でもないよ…

私は黙っていた。

俊也は私をじっと見ていた。

矢吹くん、お願いだから、こんな気持ち悪い顔、そんなに見ないで…

見ないで…

私、こんな酷い顔、見られたくないよ…

けれど、私は暫く動けず、ただ何も言えずに黙っていた。

「矢田?俺と喋りたくないの?何か喋ってよ。」

俊也はどこか不安そうで、けれど、優しく言ってくれた。

それでも私は何も言えなかった。


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