【B】君の魔法




渋滞に嵌まり込んだ
俺の車は
身動きがとれるはずもなく
惨めなまま
時間だけがすぎていく。





車窓越しに流れる
人の群れ。






ふと……
視線を向けた先には

尊子が
営業部の岡崎だったか、
岡本だったか言う男と
肩を並べて歩いている
姿が映りこんだ。









俺が傷つけて
壊れていった彼女は
俺に見せていた
笑顔をそのままに
ソイツに見せている。








思わずドアを開けて
飛び出したくなる気持ちを
必死に押さえ込んで、
嫉妬に狂いそうになりながら
僅かに開いた隙間に、
車を割り込ませてバックすると
方向転換させて、
その場所から逃げ出すように
首都高を駆け上がり
自宅へと向かう。

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