【B】君の魔法



「どうぞ」

男が
助手席のドアを開ける。



「……有難う……」


戸惑いながら……
その中に身を沈める。


男は……
運転席に滑り込んで
静かに車を発進させた。




「……あっ、あの……」



二人きりの車内。

私は……
シーンとした空間を
断ち切るかのように
言葉を紡ぐ。



……このままは……
 息がつまりそうよ。



「どうかした?」
「名前……
 教えてくださらない?」



気が付いたら……
名前……
尋ねてる私がいた……。

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