わたしの生きる道
母の友達が経営している喫茶店は、家から歩いて二十分の所にある。

今度ミホと一緒に行ってみよう。

食べている間に、ふと母の視線に気付いた。

穏やかながらも、どこか曇っている笑顔。

「母さん、美味しいよ?」

「うっうん…。ありがと。…ねぇ、カナ」

「うん?」

「すぐに決めなくて、良いんだからね?」

「? 何を?」

「その…いろんなこと。将来のこととか」

「ああ…」

昨日、姉と話しているところを、どうやら聞かれていたらしい。

キッチンとリビングは扉一枚、向こうの距離だからな。

「菜摘と菜月は『もう自分にはそれしかない』って自ら暗示をかけているような感じで今の職に就いたようなもんだし。あたしはあの二人のように、カナがなる必要なんてないと思っているから」
< 72 / 96 >

この作品をシェア

pagetop