仮病に口止め料




お姫様のお城は色とりどりお花畑の中心に建っていて、煉瓦色をした落ち着きがある外壁は――……ああ、ロマンチックな文章にも無理がある。

飛び抜けた空を電線が切って、汗を誘発する気温が道路上で揺らいでいた。


暑い、怠い、喉が渇いた、お腹がすいた。
マイナスワードを頭に閉じ込め、二人乗りをした馬車を駐輪場にとめた。


なんともありがたいことに、挙手発表をしたり宿題をしたりで俺は普段から授業態度が良いし、

(染めていない黒髪だし、ピアスなんか見えない位置に自己満足で一つ開けているだけで誰にもバレていないし、

制服も服飾コースで培った知識でスリムに改造して少しぐずくしているだけで、まあまあ好青年ぶっているから)、

生活面の身嗜みウケが良いせいだろうか、

先生が気をきかせて、田上結衣が病気ならばと、(なまっちょろい恋愛をしている)彼氏にも特別に早退を許可してくれたのだ。

< 120 / 222 >

この作品をシェア

pagetop