そんな君が愛しい
なんだろう…………
沙葉は一ノ瀬の視線の先を
見つめた。
そこには
ミカンの段ボールの中に
びしょびしょで
掠れた鳴き声をあげている……
“ニャー”
…………猫がいた。
彼は猫を見つめたまま
動こうとしない。
……と、
思っていると一ノ瀬は
軽い溜め息をついて
「あぁーもうっ……」
何かを吹っ切るように
言ったあと
傘を猫へと被せた。
「ごめんよ。
飼ってやれないんだ。
俺ん家マンションだから…。
中途半端に優しくするのは
嫌いだけど、悪いな?
ほっとけねーわ」