forget-me-not
『そんなの、…そんなの詭弁だよ』
「……」
『ふふ、夜くんがまさかそんな屁理屈いうとは思わなかったよ』
形勢逆転。私も彼に弱みをつかれた分、彼が自分でも気づくことができなかった部分を追及できたことで、私はうっすらと笑みを浮かべる。
『認めたくないの?』
ス、と私から離れてソファから立ち上がる夜くんの物腰は猫のようにしなやかだ。
けれど後ろを向いてしまったその背中からは困惑と…、拒絶がうかがえる。
「…認めたくないわけじゃない。それにキミのいうことがもし本当なら、それは僕の望んでいたことだよ」
そういうわりにはあまり嬉しそうじゃないじゃないか。なんて、出会ってもうしばらく経って彼の性格を把握できているからこそ言わないけれど。
『望んでたんなら、よかったじゃん』
「……だけど、
――――こわいんだ。」