forget-me-not







今思えば、なんてナンパな男だったんだろうと思う。それにまんまと引っかかった自分も、傍から見れば愚かだったに違いない。

それでもそのときは、その出会いが、私の中で最高に特別に思えた。そしてそれは次第に、男に対する感情にも重なっていった。



――いつしか神谷は、私の特別になった








それから私にはもうひとり、大事な親友がいた。

陵(りょう)という名前の、良き理解者。

陵は中学の中頃から学校には通わず、ふらふらと好きなことをして過ごしていた。だからといっていじめにあったとか、病気になったとかいうわけじゃなかった。


「学校にいく理由が、とつぜん、はじけてなくなっちゃったんだよ」


なにがあったのか、知るすべは未だないけれど、心配して家にかけつけた私に、陵はにこっと笑って一言、そういった。

私が考えるに、陵はとても大胆でかつ繊細な子だったんだと思う。絵や音楽の才能が人より遥かに秀でていて、人とは違う価値観の中で生きる人間だった。

確かに学校にいかなくても勉強はできたし、大学には行くつもりのようだったから、私は特になにかを咎めることはしなかった。




陵は私以上に私のことを理解していて、ときどき誰も思いつかないようなことを言ったりしては、時として周囲を驚かせた。



「神谷さんてさ、すごくフウのこと好きだよね」

『そう、かな。ただチャラチャラしてるだけなんだよ、あの人』

「でも、好きなんでしょ?」

『…うん。』

「いいじゃない。とてもお似合いだとおもうよ。でもさ、」


この時の陵が言った言葉を、私は一生忘れられないだろうと思う。
















「でも、神谷さん、フウのためになら人を平気で殺しそうだよね」












< 161 / 275 >

この作品をシェア

pagetop