forget-me-not
「フウ、」
『……』
「恋を知れてよかった。僕は君が心配だったのかも」
夜くんは私の背中をそっと抱き締めた。
相変わらず温かくはないけれど、言葉にしなくても暗黙の内に手に取るようにわかるお互いの気持ちが、熱くて。
心地よい。
「これで安心して帰れるよ。僕は人間でもないし宇宙人でもない。神様が力だけいれて作ったロボットみたいなものなんだ。感情だってないはずだった」
夜くんは私を離し、その目は優しく微笑んだ。
(…夜くんが、笑っ、た)
一度も笑わなかった夜くんが笑った。
そんなことが涙がでるほど嬉しくて、私は反対に泣いた。
「最後に君を好きになれてよかった。感情をくれてありがとう」
――さよなら。
そして私に触れるだけの静かなキスを落とした。
目を開けたときにはもう、肩におかれた手の温もりは消えていて
夜くんはもう、いなかった。
これが私と彼の始まりであり、最後だった。