forget-me-not
「――明日、病院にいってごらん」
こちらに顔を向けた黒川夜は立ち上がりそう言うと、部屋をあとにした。
(…どういう、こと?)
それまで彼が座っていた椅子をジ、と見つめ思案するも意味がわかるわけもなく…
(…リカはもう、絶対に治らないはずなのに)
それでももし、なんて心許ない期待を抱いてしまうのは、さっき見た横顔が神様みたいに綺麗だったからだろうか。
『なん、か。眠い…』
不安故の連日の寝不足がたたったのか、急に眠気に襲われる。
超常現象サークルと掛け持ちでやってるのは、バスケの応援サークルとリカに無理やり誘われて入った事実上の合コンサークルだけ。
そのどれも今は顔を出す気分じゃない。
(…少し、寝よう)
机に突っ伏して瞼を閉じた。
途端、心地よい微睡みに包まれる。
「――キミが忘れた頃にまた、戻ってくるよ」
幼き日、森の中で出会った少年の夢をみた。