forget-me-not
『どうやって治したの?…私、』
「……」
『私、あなたのこともっと知りたいの』
もう酔いがまわったのだろうか。それとも神谷のことを考えていたのを隠したかったからだろうか。
普段ならなんとなくで感じ取る、訊いてはいけないボーダーラインを踏み越えて、
やけに明るい口調で遠慮なく言った。
「僕は」
視線を壁に向けて、黒川夜は左手を頭に置いた。ちょうど左耳の上あたり。
その不自然な仕草につい、訝しむような顔になる。
彼は一瞬ハッとしてその手を離すと話し始めた。
「僕は黒川 夜。キミもそう呼べばいい。人間じゃないのも本当。恋愛を知りたいのもそう。リカを治した方法は言えない。でもいつか話す」
そこまで一気に淡々と言い切って、下から覗き込むように私と目を合わす。
『…何?』
その角度にドキリとして、声が強張った。
「…観察」
『、』
「、」
『人を、観察、しないで』
「どうして?」
あとは堂々巡りが目に見える。私は盛大に溜め息をひとつ吐いてワインを飲んだ。