秘密のMelo♪y④*ウィーン編㊦*
新聞を突き出して笑顔で頼むと、かっくんはそれを受け取って音読してくれた。
「Dieses Geniemädchen kommt zurück」
「え"。ちょっと、ドイツ語? 和訳してくれないの…?」
「真裕は分かる」
「あたし達はわかんねーわよ!」
「チッ…」
うおっ。舌打ちこえー。
でも優しいかっくんは、和訳して読み上げてくれた。
「『六年前に突如音楽会から姿を消した、サラブレット藤峰真裕。最近徐々に表舞台に戻りつつあったが、ついにバイオリニストとして完全復活する』」
「さら…なんて?」
「忘れろ。…『かつて天才の名を欲しいままにした彼女が華やかに舞い戻るその舞台は、音楽の本場ウィーン。復帰リサイタルには、世界中からファンが集まると思われる』」
ほお…。ウィーンで復帰リサイタルやるんだ。へえ…。
「『人々の心を掴んで離さなかった彼女の演奏は今も健在であろうか? 姿を消してもなお、六年間人々を魅了し続けた彼女の魅力はなんなのだろうか? 今再び注目を集めている彼女の復帰は、誰しもの心を躍らせるだろう』…まだ読むのか?」
「あ、うん。ありがとう」
しかし…そっかぁ。
復帰リサイタルねぇ。
なんか前にこんなことあったよね。偽物だったけどさ。
今度は本物だよね! うん!
「…………え、復帰リサイタル…?」
「やだあどうしよう! ね、ホントに藤峰真裕が復活するんだってよ! もうどうしようあたしっ❤」
「落ち着きぃなとりあえず。すぐ目の前に本人おるやんけ。手ぇ握っといたら?」
「そうするわっ」
「僕ら当然行けるよね、リサイタル」
「そらそやろ! 親友❤やし」
「お前が言うと気持ち悪いよ」
「ああん?」