秘密のMelo♪y④*ウィーン編㊦*
そんなことはあとあと…。
しっかり聴いとかないと…。
「お前耳で覚えるんだか…」
「もったいない!」
「……」
「あ…。そ、そうだねっ! 耳で覚えるんだからしっかり聴いとかないとねっ…!」
うん…! その通りっ。その通りだよっ。
しれっとした視線で見られて、慌てて弁明。
しきりに笑いながら頷くと、ぷいっと顔をそらして楽器を構えた。
そして流れる音色。
聴いているうちに…あたしもこれが弾きたいって思った。
こういうの、案外大事だと思う。
弾きたいなって思えた曲が出来れば、この上ない幸せだし。
「かっくん……まおリサイタルの曲これにする!」
「ん」
かっくんが弾き終わって、びしっと人差し指を突き立てて宣言すると、優しく微笑って頷いてくれた。
「じゃあとりあえずやってみな」
「うんっ」
かっくんの真似しちゃいけないんだよね。
だからえーと…。
さっきのはいったん忘れてと。
「じゃあまあ」
またも、意味なくえほんと咳払いしてみたりして。
バイオリンを構えた、まさにその瞬間であった!
―ばーんっ
『マヒロー!!』
えええええー!?