記憶のつぶ
花が降る

小さな紙に大きく咲く花

「花火大会、気になるの?」
「いぇっ!!」
思わず、場に似合わない高い声になる。
『気になってました。』
と言わんばかり…

「遠慮しなくていいんだよ。」
「…いえ…」

車窓の風景だけが動いている。

「もう一泊していこうか。」
彼はニッコリと私を覗き込む。
「それは悪いです!」
「明日の夜に戻れば大丈夫だし、今年初の花火みたくない?」

私は返答に困ってしまった。

今年初どころか、
今の私にとっては、

…人生初にあたる。

彼もそんな私に気付いたのか、少しすまなそうに眉が動いた。


新幹線が停車する。
「さ、降りるよ。」
「でも‥」
花火大会最寄りの停車駅。

彼は私の荷物も持ち、さっさと行ってしまった。
私はただ‥
ただついていく。

先に今日の宿泊場所だな、と駅前のホテルをあたっていく。
しかしどこも満室。


少し駅から離れた旅館にあたると、
「空いておりますよ。ちょうどキャンセルがありまして。」
にこにこ台帳を取り出した。
「…一室だけですよね?」
「えぇ?」
なにかあるのか?
という顔。
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