【短編集】闇に潜む影
嘘だ。
嘘だ。
俺、まだ死んでなんかいない。
だって、こうやって物事を考えたり、しゃべったりしているじゃないか。
体は動かないけど、これはきっと金縛りか何かにかかって、
動けないだけであって。
「キミは今、魂だけになって、ここにいるの。
だから、人間として生きていた時に得た思考能力とか言語能力など、
精神活動的なものは残るんだよね。
肉体は滅びたからもう自由に動いたりはできないけど」
“天使”は、
今自分が考えていること全てを見抜いているようだった。
どれくらい沈黙していたのかもわからない。
その間、俺自身が何かを考えていたのかも。
ただ、なぜか、どうにかしようとする俺の思考が、
口を動かした。
何度も何度も、口にした同じ言葉を再び口にするように。
「俺、・・・本当に死んだの?」
“天使”は嬉しそうに笑っていた。
「そ、分かってくれた?」
「・・・嘘だ」
「・・・はぁ」
“天使”は盛大なため息をつくと、
手にした紙を一瞬にしてまた消した。
そして。
「じゃ、仕方ないね。見せてあげるよ。一応手続は済んだからね」