Look ON!
「まぁ、どうしたの!」

母親の驚きを隠せない声。バタバタと洗面所のほうへ向かう足音。
数秒後には真っ白なタオルを持って靖也の母親である都子は同じく靖也の父親の雅也の元に駆け寄った。
何事か、と階段上から顔をのぞかせる靖也が見たものは、まさに赤い雫。
その色を見た瞬間靖也は階段を駆け下りた。



「親父っ!? 誰や、……それ」



雅也は一人の少女を連れてずぶ濡れでそこにいた。
どうやら赤い液体は雅也のものではないらしい……
「早く手当てしないと」と、都子が靖也に近くの医者を呼ぶように話しかけたが靖也の耳には届かない。
雅也に支えられてやっとの思いで立っているその少女は自分より年下。
靖也はその虚ろな瞳と目が合ってから離せないでいたのだ。
しかし、やがて少女の方がふらりと体のバランスを崩して雅也に全身をあずけた。

「靖也、私の寝室にこの子を寝かせる。なるべく暖かくしてやってくれ」
「……分かった」

靖也はリビングの前に位置する雅也の寝室のストーブを入れ、毛布やらをクローゼットから何枚か多めに取り出す。
部屋の準備を整えているとき家に誰かが入ってくる気配がした。
おそらく医者だ。
靖也はリビングへと行き、他にすることがないかと都子に尋ねる。

「そうね、彼女に何か食べさせなくちゃいけないから買い物頼んでも良い?」

そんな都子の言葉で靖也は買出しに出かけた。

帰って来たときには医者も帰り、両親がリビングで話をしていた。
靖也を見つけた雅也は隣に座るよう促し、ことのいきさつを語る……

隣町の知人に会いに行った帰りに雅也は彼女を発見したらしい。
橋の上をフラフラと歩いているのが気になって見ていたら彼女はふらりと倒れて川に落ちた。
そして、慌てて自分も飛び込んで彼女を引き上げ、家まで連れてきたのだ、と。
名前も何も分からないが、体中傷だらけで放っておくことも出来なかったと。
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