さもありなん
「…シンデレラみたいですね」
「へぁ?」
「あぁ…その靴の形が、何だか」
「…シンデレラはガラスの靴だよ。
こんなキャメル色のエナメルパンプスじゃない」
「キャメル?ラクダ色?」
「…その言い方は嫌だなぁ、女の子にモテないよ」
「…すいません」
「…でも、シンデレラみたいな靴って言い方は、好き」
砂だらけのパンプスだけど、と顔を上げた彼女はようやく笑っていて、つられてこちらも笑顔になる。
「ほら、早く履いてください」
「うん」
立ち上がるためにバランスを取るために自分の右腕を掴んで、白っぽくなってしまったタイツを軽くはたく。
右足、それから左足のつま先をつ、と入れたその姿に、やっぱり、と思う。
「シンデレラみたいですね」
「もういいです」
「いや、そうじゃなくて。何か。その靴を履くときの司さんが、シンデレラみたいだなって。そういうシーンありませんでした?」
似ていたので、と笑えば彼女の肩が少し緊張するのが分かった。