この世界は残酷なほど美しい


僕を起こしたのは奈緒子だった。
それに再び驚いてしまう。
周りを見渡すと教室には僕と奈緒子しか居なかった。

ちょっと気まずいと思う僕は最低だろうか。


奈緒子は不思議なものを見るような表情で僕を見て、小さく笑った。
今朝の泣いていた奈緒子の姿はここには無かった。



「ぐっすり寝てたね。もうみんな帰っちゃったよ?流星くん、何回起こしてもなかなか起きないんだもん」



「あはは、ごめんね。起こしてくれてありがとう」



笑って誤魔化しながら、ちらっと莉子の席を見ると当然ながら莉子の姿はなかった。
もう帰ってしまったのだろう。最後に挨拶したかったな。




「流星くん、帰ろうか」



莉子の席を見つめていると奈緒子がそう言った。
僕は動揺しながら「うん」と返事をする。


僕はきっと一生奈緒子には勝てない気がする。


今だって僕が莉子のことを考えていたと知っていながら何も言わないから。


奈緒子は常に僕の一歩先を歩いていた。



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