この世界は残酷なほど美しい
莉子との生活が何年も続く。
莉子が笑うようになったのは診断されて4年程経ってからだった。
莉子は15歳、高校一年生になった時。
「どうした?」と聞くと「好きな人できたの」と言った。
まさか莉子に好きな人が出来るなんて思ってもいなかったから凄く嬉しくて涙が出そうになった。
その日からよく莉子は日記を書いていた。
前に一度だけちらっとそのノートを読んでしまったんだ。
お兄ちゃんのやることじゃないよな、ごめん。
『あたしたちは殻の中に閉じ籠った青虫だから、一緒に蝶々になるの』
『流れ星の意味を聞いた。すごく素敵な言葉だったよ』
その文字たちは莉子が一生懸命生きる証だった。
莉子に笑顔を取り戻してくれた人に感謝したい。
そう思い、彼に逢いに行った。だが彼もまた精神科に通う男の子だった。