この世界は残酷なほど美しい



俺は急いでここから去る方法を考えた。
莉子の荷物をキャリーバッグに詰め込んで、ダッフルコートを莉子に羽織らせた。

「母さんも行こう」と言うと母さんは「私はあの人から逃げられない」と泣きながら言われた。
ここにいつまで残っていても仕方ない。
ずっとここにいたら自分が自分で無くなってしまう。
莉子だけでも救いたかった。

俺は慌てて日本行きの航空券を買い、日本に向かった。

日本に戻ってきてからすぐに病院に連れて行った。
そうしたら統合失調症と診断された。
カウンセリングを受け、徐々に莉子の体調が良くなるのを願った。


莉子は歌うのが大好きだった。だから一人でよく歌っていた。


両親からの連絡は無かった。
一応社長だったし、自分のしたことが公にされたくなかったのか。
父さんは自分の価値しか守らない人間。
家族を優先するのではなく価値しか大事ではないのだ。


どんな腐った人間なのだろう。

でもこれで莉子が安心するならばそれで十分だ。




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