この世界は残酷なほど美しい
時折涙を見せるお兄さんを見て本当に莉子が大事なんだと確信をした。
こんなにも大事に思ってくれる人がいるなんて莉子は幸せだな。
そして不意にも「僕は必要ないんじゃないか?」と思ったりもした。
「どうだった?話を聞いて」
ざわざわとまだ青い葉が音を出して揺れている。
そんな中、僕はぽつんとこの世界に取り残された感覚となった。
「僕は……えっと」
言葉が出てこない。
さっきまであんなに偉そうに「莉子を守りたい」って言ってたじゃないか。
あの余裕綽々な自分はどこに行ってしまったのだろう。
「俺が言ったことは気にしないで。キミは莉子を救えないよってこと。ただ試したんだ。安易に莉子に近づいてるんじゃないかって。俺は一応莉子の保護者だし、莉子にはずっと笑っててもらいたいから」
お兄さんは煙草に火をつけてそう強く言った。
その横顔が脳裏に焼き付いて…
今も離れないでいる。