この世界は残酷なほど美しい
蒼空の下で母さんは息を引き取った。
僕はそれを遠くから見つめることしか出来なかった。
母さんが最後に言った言葉を今でも覚えている。
「お母さんね、とっても寂しいの。約束を守れなかったから」
寂しいのは僕の方だ。
お母さんにもっと遊んでもらいたかった。
お母さんに褒めてもらいたかった。
徒競走で1位を取ったら笑顔を見せて「すごい!」と言って欲しかった。
テストで100点取ったら「偉い」と言って欲しかった。
でもそれができなくなる。
寂しいのは僕だよ、お母さん。
「……流星?」
「あっごめん。ちょっと昔のこと思い出してた…」
「雅は…元気か?」
春さんは心配な様子で僕の顔を覗き込んだ。
春さんは父さんの友達でもあったから。
僕は視線を足元に落として首を傾げる。
「さぁ?あの人は何を考えてるか分からないから」
小さく笑ってみせた。
それは寂しさを埋める行為によく似ていた。