この世界は残酷なほど美しい


そんなある日。
お姉さんは病室から中庭を見下ろしてこう言った。



「あのベンチに座ってる男の子、分かる?あの子ね、私の息子なの」




「え?」



まさか、と思った。
だって美羽お姉さんはまだ若いと思っていたから。
想像していた年齢は10代。
だけれど指差す先には私と同じくらいの男の子。
私は驚いてしまい言葉を失うと同時にお姉さんを二度見した。



「あの子との約束守れなかったの」



「どうして?」



「今から検査が入っちゃって…本当は星の折り方を教えてあげる約束をしてたの。『今日はできない』って言ったら怒っちゃって…私が悪いの」



お姉さんはベッドのシーツを強く握った。
そして残念そうな表情で男の子を見ていた。
そんなお姉さんの気持ちを間近で感じていた私はここにいてはいけないと思った。

私にはやらなきゃいけないことがある。




そうやって、強く。





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