この世界は残酷なほど美しい


決めつけないでよ、僕が誰かに恋をしたなんて。
もし相手が莉子だったら莉子には好きな人がいて…僕が入る余裕などないのだから。



「…僕は誰も好きにならないよ。さぁ、帰ろう」



僕は歩き出した。
その間もずっと心臓はうるさいまま。
唇を少し噛んで行き場のない気持ちを殺した。



校門をくぐり、駅に向かおうとした時、携帯をいじりながらフェンスにもたれ掛かる男の人と目が合った。
黒い短髪に整った顔立ちはまるで芸能人のようだった。
僕と目が合ったと確認した彼は僕に近づいてくる。


怖くなった僕はその場に立ち止まる。

もしかしたら彼はナイフを所持していて殺されるか誘拐されるのかと勝手に想像してしまった。




「あのさ!安野莉子、知らない!?迎えに行く約束してたんだけどアイツ居ないんだよ!」



「えっと、莉子なら…帰りましたけど…」




「はぁ?まじで?…アイツ一人で行きやがったな」




目の前ではぁ…とため息を漏らす少年。



あなたは一体莉子の何?






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