パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~
「あっ!!そこ、左!左に行って!」



運転席に身を乗り出して奈桜が叫ぶ。
が、奈桜の乗ったタクシーはもうゆっくりと直進の流れに乗って、動き出している。



「この先で曲がってもいいですか?」



困ったように運転手が言う。
通り過ぎる瞬間に曲がってくれと言われても、無理というものだ。



左に曲がって行く紗希を乗せたタクシー。
その先に何があるのか奈桜だって知っている。
ただ、そこを通り過ぎるだけだと思いたい。
でも、もし違ったら。



「まさか宮ちゃん・・・。ホテルなんか・・・」



悪い方に考えたくはないが、あの雰囲気はおかしかった。
この業界、仕事欲しさに女の子がテレビ関係者と体の関係を持つ事があるらしい・・・とは聞いた事がある。
でも、まさか・・・




「お客さん?」



「あ、ここでいい。・・・釣りは取っといて」



慌てて降りると、奈桜はさっきのタクシーを追うように走り出していた。
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