パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~
「・・・はい」



リビングのソファーに腰を下ろし、電話を持ったまま上手くジャケットを脱ぐ。
ネクタイを少し緩めると、体が急に楽になった。



「あ、ごめんね。こんな遅くに。あの・・・、ちょっと声が聞きたくなって。ごめんね。私、何してるんだろ?眠れなくて。奈桜の事ばかり考えて。・・・ごめん。こんな時間に。ほんと、ごめん。お休みなさい」



「待って。梓!!」



梓は心細げな声で呟くように言うと、奈桜の返事も待たず電話を切ろうとする。
すぐに切ろうとするのは、やはりかけた事にかなりの迷いがあって後悔したからだろう。
何かを期待していたのかもしれないし、ただの未練かもしれない。
どちらにしろ、奈桜にとっては良くない行動をとってしまった自分を情けなく思っている。
綺麗に別れようと思えば思うほど、奈桜に引き留められたい梓の心があった。
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