春 ~風が吹いたら~
『あ…いえ、何でもないです。あ!出さなきゃいけない品物を見てきますね。』
あたしが慌てて、その場から立ち去ろうとすると、
『ずいぶん、西野くんと親しそうじゃない。』
腕をギュッと掴まれた。
『し…親しくなんかないですよ。』
『親しくないなら、なんで帰りがどうのって話になるわけ?仕事場の人ってだけなら、そういう話にはならないんじゃない?』
『それは…帰りは……』
きっと何を言っても、言い訳にしかならない。