天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「あ、あたしは…」

ふらつきながらも、エミナは立ち上がった。

「最強の女神だ!」

すると、髪の毛の色が赤に変わった。

「無駄です」

サラは、炎の女神になったエミナを見つめた。

「A Blow Of Goddess!」

玉座の間で、女神の一撃を放つ体勢に入るエミナ。

「遅い」

しかし、女神の一撃が放たれることはなかった。

サラの拳が、エミナの鳩尾に突き刺さっていた。

「う」

エミナは膝から崩れ落ち、気を失った。

「…」

しばらく倒れたエミナを見下ろしてから、サラは目線を3人の魔神に向けた。

「お前達も鍛えてやる」

サラの気迫に、3人の魔神は無意識に構えていた。







「はははは!」

部屋の中にいる人々の闇を吸い上げながら笑うヤーンを見て、幾多は殺すべき相手と本能が判断した。

しかし、理性がストップをかけた。

(まだだ)

そう自分に言い聞かせると、幾多はヤーンに背を向けた。

「うん?」

部屋から出ていく幾多の後ろ姿を見て、ヤーンは首を傾げた。

「――まあ、いい」

頷くと、ヤーンは軍服の胸元に手を入れ、あるものを取り出した。

光り輝く球体。

それは、美しさと反比例して、悲しみと恨みで溢れていた。

「数万人の命の塊。そこに、闇を注ぎ込めば…」

ヤーンは、にやりと笑った。

球体に触れている部分から、黒くよどんでいく。

「もっと闇も!人間の魂も必要だ」

ヤーンは、球体を握り締めた。

「この球体が育ち、破裂した時こそ!人類が避けて来た!魔物との最終決戦が始まる!そして、それが終わった後!」

ヤーンは、にやりと笑った。

「今とは違う歴史を!人類は、歩むことになる」

球体が完全に、黒と混ざると、ヤーンは満足げに頷き、自らの胸元に球体を押し込んだ。
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