引っ込み思案な恋心。-2nd
「別れるなんて……、できるわけないよ」
松沢さんに言われても…
私達は気持ちが通じ合ってるわけだし、理由もないのに別れられない。
ハッキリ断ったつもりだけど、松沢さんはそんな答えは想定内のようで、まだ余裕の笑みを浮かべている。
「じゃあさぁ、チャンスをあげる。瀬川が明日の体育祭の最後のリレーで1位を取れなかったら、私は陸上部を辞めて瀬川とも必要以外は話さないって誓う」
「え…?」
拓がリレーで1位じゃなかったら、松沢さんは身を引く…ってこと?
「その代わり瀬川が1位を取ったら、私はどんな手段を使ってでもあなた達を別れさせるから」
「な…っ、そんなの……、めちゃくちゃじゃない!?」
拓のリレーの結果次第で私達の運命が決まるなんて…
そんな話、飲めるわけない。
思わずベンチから立ち上がった私を、松沢さんは笑顔を崩さずに見上げてきた。
「…いい反応だね。でも関係を続けようと思ったら、簡単な方法があるじゃない」
「え…?」
「杉田さん、頭がいいんでしょ?だったら考えてみてよ。毎日陸上部のトレーニングを受けてる瀬川が本気を出せば、たぶん簡単に1位になれると思う。じゃあ…、本気を出させなければいいってコトでしょ?」
「………私から拓に…、『1位にならないで』って頼めってこと…?」
拓がリレーで本気を出さない、確実な方法。
それは、『拓の彼女』である私から、拓に頼み込むこと──。