引っ込み思案な恋心。-2nd





私は昨日の出来事を拓に説明した。






一旦は靴箱に着いて話を中断させたんだけど、上靴を履き終わって階段を上ろうとしたら拓が待っていて、そのまま私は手を引っ張られ、階段を上って行った。






教室のある階を通り過ぎ、更に上へ上へのぼって……、屋上に通じる扉の前まで来た。






拓はその扉のドアノブをガチャガチャと回したけど……、扉はビクともしない。






「…あれ?やっぱ閉まってんな〜。ま、いっか。たぶん誰も来ないし。ココで続き聞かせて?確か…2組が1番に歌うってトコまで聞いたよな?」



「あ、うん。それをあゆに報告しようと思って早く来たんだけど…」



「1番はキツイよな〜。でもどっかのクラスが1番で歌わないといけねえわけだし…」



「クラスにどう伝えたらいいのか悩んでるんだ。ななっぺは、あゆがフォローしてくれると思うから、とりあえず相談しなよって言ってて…」



「ああ〜。去年も確かそーだったよな。あの男子に人気の細井が、クラスほぼ全員から責められてて…、多田とか俺が間に入って無理矢理丸く収めたんだけど」






屋上の手前の階段に座り込んで二人で手をつなぐ。






私達を包んでいたひんやりと静かな空気が、拓の手を通じて少しだけ温かみを帯びたような気がした。






「うん。それをあゆから聞いてて、もし去年のななっぺみたいになったらどうしようって…」



「俺が2組ならなー。文句言うヤツ全員黙らせてやるんだけど、さすがに今回は多田に任せるしかないからなぁ」



「そうだよね…」





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