引っ込み思案な恋心。-2nd
「うそ?瀬川、松沢さんと帰って行ったの?信じられない!ごめん、私止めるべきだったね。気付かなくて……」
とにかくここじゃ人目が気になるからと、ななっぺは3組の教室に私を抱きかかえながら入れてくれた。
3組の生徒はみんな帰ってしまったらしく、教室の中はすっかり静かになっていた。
ななっぺは一番後ろの席に私を座らせてくれた。
その机の上に、私とななっぺの荷物を置いた。
「あっ、私の都合なら気にしないで?今日は合唱部休みだから」
「あ…りがと…」
涙で上手く声が出ない。
でも、ななっぺの優しさが嬉しかった。
「あかねちゃんから聞いたかもしれないけどさ、ここ数日松沢さんが瀬川と話すことが頻繁にあったから…、あかねちゃんと二人で瀬川に松沢さんを近づけないようにしてたんだ」
「うん…、知ってるよ」
「私、本当に瀬川のことはスッパリ諦めてるから。今は単なる友達としか思ってない。だから……」
「ななっぺのことは…、一瞬驚いたけど、あかねちゃんから事情を聞いて、ちゃんと信じてるよ」
「ありがとう。でも…その涙……、瀬川が松沢さんと帰ったって……、何があったの?」
ななっぺが私の前に座り込んで、私の顔をのぞき込んできた。
その表情は…、本気で私のことを心配する顔そのものだった。