目に映るものすべて
 私は違う。

時間の中を必死で漕いでいかなければ、遅々として動かない時間の中に埋もれてしまう。

 埋もれたら、窒息する。

 いっそ窒息してしまえばいい。けれど、実際は、時間を必死で進めていき、それにかじりついているしかないのだ。

 私は自分が存在し続けていることが苦痛なのだ。

 じっとしていると何かに押しつぶされている。

 私のところだけ、気圧が違うのだ。

 だから、這うように、ここにいるのに、誰も、それに気付いてくれない。

 異様なものを見たように、私を見てくれない。

 私は今、普通に見えるんだろう。
 
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