KISS AND SAY GOOD-BYE
遣ると腹を括った瞬間から、俺は殆ど睡眠以外は新星MUSICにかかわっていたって言っても良いくらい頑張った。
あっという間に大晦日だ。
俺は、バイト先の新星MUSIC日本支社を夕方6時に上がり、美華と一緒に帰った。
「今晩の夜中って言うか、明日の早朝5時に家をスタートして初日の出を見に行くんだ。
良かったら一緒に行かないか!?」
『朝5時!?
何か早くて寒そうね!』
「まぁな!
けっこう寒いけど、初日の出見たいじゃん!」
『どこで見るの?
東京タワーとか!?』
「いいや、違うよ。
江戸川区臨海町の葛西臨海公園で見るんだ。
彼処から見るとけっこう凄いんだぜ。
美華ん家からだと、30kmほどしか離れてないから、30分くらいで着くよ。
葛西臨海公園の直ぐ近くに24時間営業のファミレスが在るんだけど、そこからコーヒーを飲みながらの初日の出は、俺達学生の有り難い初日の出のビューポイントなんだ。
中は暖かいしね!」
『 葛西臨海公園の中には入らないの?』
「しんどいじゃん。
けっこう歩くよ。
俺は大丈夫だけど、美華辛いよ。
公園入り口から、一旦海側まで歩いて、それから絶景のビューポイント迄東に更に歩いて!
そうなると、こっちの出発も1時間早くなるし、どうだい?」
『それはやだ!』
「だろ!
だから、ファミレスんだよ。
でっかい窓から海を見ながら暖かい店内でコーヒーを飲んでいたら、段々と明るくなってきて、窓一面が真っ赤に輝くんだ!
どうする?
行くだろ!?」
リュウのバイクで初日の出かぁ!
寒そうだけど、楽しそうだな!
よし、行っちゃうか。
『分かった。
パパに話して、OK貰うわ。
リュウと一緒に行くんで大丈夫だとは思うけどね。』
そして、これがまたまた大変な事になっていくんだ。
彼女を家まで送り届けた時に、丁度美華の親父さんが在宅だと言うので、挨拶をして明日の早朝に初日の出に行くことを了承して貰った。
安全運転で宜しくな!って言われ、「はい!」と返事して、美華には早めに寝ててな♪朝方迎えに来るからな。と言って彼女の家を後にした。
愛車のバイクに跨がり、ヘルメットをかぶりセルモーターでエンジンをかける。
数秒ほどアイドリング00してから、新大久保の自宅に向けて、バイクを走らせた。
ハーレーダビッドソン特有の低い音を響かせながら、自宅に到着したのは夜8時少し前であった。
「ただいま!
アヤ姉、アボジ(親父)とオムニ(お袋)は!?」
『買い出しに行ってるよ。
正月は来客も多いから、色々と買っとかないとって行ってたわ。』
「アヤ姉、彼氏と初日の出に行くの?」
『勿論!
彼の車で横浜の夜景を見ながら過ごして、朝は初日の出を拝んで帰ってくるから。
もうすぐ迎えに来るはずよ。』
「よくアボジ(親父)が許したな!
また何か嘘でも言ったのか、あや姉!?」
『さぁ、何の事!?
私は、ゼミの集まりで初日の出を見に行くとしか言ってないもんね!
リュウ、あんたは余計な事言わないでよね、分かった!?』
相変わらず、俺には容赦なく高飛車で接してくるアヤ姉であった。