夜をすり抜けて

振り返った樹の顔に、フッと優しい色が差した。


「そんなこと言ってんの誰かに聞かれたらバカだと思われるぞ」


そう言った彼の表情で、わたしわかっちゃうよ?



樹も同じことを考えている。


絆なんて幻想だって言うくせに
ホントはまだ佐伯さんのことを信じてる。


笑って話してくれたあの写真の頃のまま、樹は佐伯さんのことが好きなんだ。



だけど確かに信じきれない自分もいて

押しつぶされそうな自分もいて



だから、苦しいん…だよね?


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