夜をすり抜けて
「意地悪言われたか?」
樹がわざと脱力した感じで声をかけてくれた。
ブンブンと首を横に振ると、こらえていた涙が一粒、ピッて飛ぶ。
「逆…だよ」
長くしゃべれそうにないので、それだけ返事をすると、樹は心底ホッとした声を出した。
「そっか」
「…うん」
カチッと久々にFMラジオをつけ、それから樹はずっと黙って運転を続けた。
搬入先の工場に着き、彼がトラックを降りていく。
「あ、手伝うよ?」
慌てて声をかけると、樹はプスッと笑って
「頼むからそこで待ってて」と言った。