夜をすり抜けて

トラックはどんどん山の中へと入っていく。


前にも後ろにも対向車線にもライトは光らない。


そこには深い深い闇があるだけだった。


「この先に急カーブがあって、そのまま突っ込むと、下、崖だから死ねる」


樹の声が何でもないことのようにそう告げた。




……マジなの?


ドックドックドックドックドック…


心臓が飛び出しそうな音を打つ。


樹がぐっとアクセルを踏み込むのがわかった。


山道へとせり出した木々の枝々が、凄い勢いで後ろへと流れて行く。


ちょっ…待って。どっ、どうしよう…!?



視界の先に急カーブが見えた。


その向こうには真っ黒い闇がポッカリと大きな口を開けて待っている。


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