*恋の味[下]*


「あーもー!」

「うおっ、なんだよ」

「もう、どうすればいいの?!結局苦しいのは私だけなんじゃんか!ツラいのは私だけなんじゃんか!」

また涙が出る。

叫び声は風を遮り、雷斗の耳へ入る。

さっきまでヘラヘラしてた顔つきは、眉を八の字にして困ったような笑顔をしている。

「んなもん、簡単じゃねぇかよ」

簡単……?

私の気持ちをそれ程のものだと、そう思っていたの?

「いい加減にしてよ…」

私の喉から出たはずなのに、私の声じゃなかった。

こんな低い声、出したことがない。

俯いているせいで、雷斗の表情(カオ)は見えないけど、聞こえるのは、車のエンジンの音と風の音、遠くで遊んでいる子のはしゃぎ声だけ。

「私の気持ち、バカにしないで…」

そんな楽なもんじゃないんだよ。

そんな小さいもんじゃないんだよ。

涙は止まらない。

「信じてみろよ」

頭に重みがかかる。

「信じた結果じゃない」

「信じてねぇ……」

……どういうこと?

「ちゃんとは信じてくれてねぇよ」

……なんで…。

何も知らないくせに……。

「ためてんだろーがよ」

「なにを…「全部」

ためてなんか……!

ためてなんか……、

「……うぅ…」

あるかもしれない。


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