とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
次第に距離を縮め唇が触れる寸前で右京は「ならいいんだけど」と微笑んだ。
風に靡く銀髪の隙間から覗くオッドアイが優しい。
「大好きよ、右京…でも私以外と関係を持ったら許さないから!」
「あ~大丈夫だよ。色んな意味であり得ないから。」
「…色んな意味?」
首を捻る忍の耳元でその理由を囁く。
みるみるうちに耳まで赤くなると忍は「バカじゃないの!?」とお決まりの台詞を吐いた。
右京はそんな忍の手を引いてまた歩き出した。
「でも身勝手だよな~…」
「何の話?」
「ミーシャだよ。ユーリの妹!…俺の気持ちも考えろって…」
「あら、人間ってそんなもんじゃない?」
「忍も?」
「右京だってそーゆーとこあるでしょ?」
忍の指摘に右京は「そう?」と眉を寄せた。
「みんな自分の事でいっぱいいっぱいなのよ。彼女もただそれだけなんじゃない?」
忍の言う通りかもしれない。
きっと今忍に別れを告げられても俺は納得出来ないと思う。
「うん…何となく理解出来た。俺も多分忍を放さない。」
そう右京が言うと忍は少し驚いた。