とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「右京とお父さん…何かあったの?」
「さぁ…」
忍が興味無さそうにそう答えると母は「そう…」と心配そうに右京達を眺める。
「おい…」
「…」
「おい!」
「…誰に言ってんだよ…」
「お前しか居ねぇだろ!ソレ取れ…」
「はぁ?ソレってなんだよ…」
「ソレだよ!その醤油に決まってんだろ!」
「わっかんねぇよ!自分で取ればいいじゃねぇか!」
雲行きが怪しくなり、忍と母は同時に溜め息をつくと早々と朝食を済ませた。
さっさと食器を下げ始め、食べ終わった祖父から皿を受け取る。
「ワシは道場に居るわい…」
「そうね。後で右京も行かせるから…」
そう言う忍の後ろでバンッ!とテーブルを叩く音が聞こえて振り返った。
「お前、誰に向かって口を聞いてるんだ!」
「叔父さんしか居ねーだろ!朝っぱらからうるせーな!」
「昨日といい今日といい…忍!こんなヤツ止めとけ!」
「そんなの叔父さんが決める事じゃねぇだろ!」
忍は黙って騒ぐ二人の食器を下げる。
「…あんた…本当に知らないの?」
「…知らないわよ…」
忍は時計をチラッと見て「そろそろいかないと!」と母に言うとパタパタと自分の部屋へと戻って行った。
その場に残された母は腰に手をあてて、睨み合う二人に「いい加減にしなさい!」と一喝するのだった。