とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




『クリス、聞こえたか?』




『ああ、聞いてる。…どうする?泳がせるか?』




アランは『そうしよう』と言うと右京とクリスに待機を指示した。




─バージ。そいつに着いて行け。




─はい…。ですが…鼻息荒くて気持ち悪いです…。




愚痴るバジリスクに右京はちょっと吹き出す。




─間違っても殺るなよ?




─…努力はします…。




バジリスクもそろそろ限界らしい。




右京はビルの裏路地に入ると壁を蹴りながら軽々と屋上に飛び上がった。




クリスの姿を見つけて彼の肩に手を置くと、軽く右京に手を上げて応える。




出口から出てきたバージと男をライフルのスコープから覗いていたクリスが呟いた。




『…苦しそうだな…そろそろ自我が崩壊しそうだな…』




クリスの言った通り、男は荒い息を繰り返して辛そうだ。




『自我が保てるのは48時間が限界って言ってたよな?』




『ああ。多少の差はあるが大体そんなもんだ。』




となると、あの男は少なくとも一昨日クドラクに襲われたのか…




─マスター…この男、様子がおかしいんですが…



─気にするな。自我崩壊のカウントダウンに入ってるだけだ。




『さて、あの男がどうするか見物するとしよう…』




クリスの隣で右京がそう言うと、本部でもアラン達が監視カメラの映像を凝視した。




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