とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
…とは言ったものの、彼らからの通信が入るまでシンディは不安らしく、落ち着きがない。
『ありゃ、完全に惚れてるな…』
その様子を見てニックは忍に小声で呟いた。
『確かに渋いわよね、クリスって…』
『俺は?』
『問題外です。』
即答の忍にニックは肩をすくめてとおどけた。
『忍は心配じゃないの?』
『右京なら大丈夫です。…約束したんで。』
『何を?』
忍はニックに『秘密です』と微笑んだ。
“俺は消えない。忍の為に生きるよ”
そう言ってくれた右京を思い出す。
─うん…。信じてるよ、右京。
貴方は死なない。
忍は心の中でこっそり呟いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『コロッセオに到着。』
シンディはその声がクリスのものでホッと胸を撫で下ろした。
『あ…りょっ、了解。えっと…ターゲットはコロッセオ南側よ!』
一目散に駆け出したのは右京だった。
その後を追うように駆け出したクリスは数十メートル進んだ所でふと足を止めた。
『…おい…ターゲットって“山羊”って言ったよな?』
『ええ、今コロッセオ南側に居るわ!』
クリスは前方の闇に目を凝らしながら拳銃を引き抜いた。