とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
─ターゲットはコロッセオ南側?
…じゃあアイツはなんだ?
目の前の闇の中にゆらりと立つ2m程の怪物…。
頭から突き出た大角の片方が折れた、山羊のような怪物だった。
クリスは銃口をそれに向けたまま安全装置(セーフティ)を解除する。
『…俺の目の前に居るぜ?』
『まさか!そんなはずないわ!…ポインターはコロッセオの南よ!?』
そんなはずないと言われても現に目の前に居るのだ。
クリスはバフォメットの紅い瞳を見据え、相手の思考を読み取る。
低い唸り声を上げながらゆっくりと近付いて来る怪物に、クリスはジリジリと後退して間合いを取った。
─油断したらヤられる…。
第六感とでも言うのだろうか。
直感的に相手の動向を見極めるように思考を集中させた。
視界の隅に微かに動く影…。
『…山羊の次はオオカミか…』
クリスがチラッとバフォメットから視線を外した。
直ぐに視線を戻す、1秒にも満たない一瞬だった。
一気に間合いを詰めたバフォメットがクリス目掛けて鋭い爪を振りかざした。