とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




顔を洗って馬の世話をするユーリの元に向かう。



ウキョウに気付いてユーリが手を上げた。


それに応えると甲高い鳴き声が聞こえて空を仰ぐ。




『さっきからずっと待ってたみたいだぞ?』




ユーリはバージを指差してウキョウにそう言うと自分の馬にブラシをかけた。



『今日は少し寝過ごしたからな…』




ウキョウが口笛を吹くと、それに反応して降下したバージがいつもの様に近くの木に舞い降りた。




ウキョウはバージに『おはよう』と言ってから軽く準備運動を始めた。



そして少し目を閉じて精神統一をしてから構えて拳を繰り出した。



身体を動かしながら夢の中で言われた言葉を思い出した。



“朝稽古するんでしょ?”



脳が命じるのではなく身体が自然と動く。



多分長年の習慣だったのだろう。



夢の中の彼女はそんなウキョウの習慣を知っていた。



だが彼女の顔がどうしても思い出せない。




モヤモヤとした気持ちを振り払うように身体を動かす様子をユーリは黙って眺めていた。



『ウキョウは格闘家なのかもな…』



『…どうかな…』



あの彼女に会えればそれも解るだろう…。



最近はユーリの仕事を手伝いながら毎日街まで行っているが、無くした記憶が甦る事は無かった。




< 46 / 461 >

この作品をシェア

pagetop