とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
右京は順調に行けば今年大学を卒業するだろう。
彼も頑張っていると思うと自分も可能性に挑戦してみたくなったのだ。
「まだ結婚なんて考えてないですよ。」
結婚願望がない訳じゃないけど、やりたい事をやってからにしたい。
母にそれを話したら不満そうな顔をしていたけど…。
「まぁ、忍がそうしたいなら私も応援する!困った事あったら相談乗るよ?」
「谷地さん、好きだ~!ありがとうございます!」
抱き付く忍に谷地は「オーバーだ」と笑った。
それから暫くして忍は記者として雑誌の記事を書かせて貰える事が決まった。
1ページにも満たない小さなワンコーナーだけど、忍にとってはとても意味のある事だった。
忍は並木道を走って家に急ぐ。
─帰ったら右京に報せよう!
彼ならきっと自分の事のように喜ぶだろう。
ふと足を止めて並木の枝を見上げる。
桜の蕾も膨らみ、今にも開花しそうだ。
─私や右京も蕾みたいな感じかな…
そう思うと並木の蕾ですら愛しく思えた。
なんとなく右京の台詞を思い出す。
─私達は…“アルカディア”には近付けてるのかな…?
“少しでも貴方の近くへ─”
─そしてまた忍は走り出した─
【END】