こころ
「……一つだけ、言わせて下さい。」

美姫さんは、帰る直前にきりっとした表情でそういって私と向き合った。


「私は、好きですから。進先輩のこと。」

だから、進君に手を出すな。そういいたかったのだろう。

「言う相手が違うんじゃないかしら?」

震えそうになる声を必死におさえて、そう返した。

「進先輩にはちゃんと言ってありますから。」

そういって、今度こそドアをあけて美姫さんが出ていった後、なんだかため息がでてしまった。


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