鉄の救世主(くろがねのメシア)
ヘリはそのまま現場に着陸せずに通過する。

「通り過ぎてしまうんですかっ?救助任務は…!」

麗華が言うが。

「現場を見ただろう」

小川が苦虫を噛み潰したような表情で座ったまま呟く。

「自分達の任務は要救助者の確保だ。ここには『要救助者』はいない」

「……!」

冷徹とも取れる小川の言葉に、麗華、そして豊田も絶句した。

既にこの場に生存者はいないという事だ。

ほんの数時間前まで、日曜日の昼下がりの賑わいを見せていた。

穏やかな晴天の下、多くの市民が休日を楽しんでいたのだ。

そんな笑顔も何もかも。

たった一つの隕石によって消し去られてしまった。

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