鉄の救世主(くろがねのメシア)
しっかりと準備を施した上で、豊田は単身川の中へと入っていく。

軍靴や迷彩服が濡れる事など厭わない。

川底に密生した苔に足を滑らせないように注意しながら、ゆっくり、ゆっくりと前へ。

流れはあるが、体が持っていかれそうな程ではない。

豊田とて、女性ながら毎日戦術自衛隊で訓練しているのだ。

これしきの川が渡れない訳がない。

何とか渡河を終え、豊田は老婆のもとに到着した。

「お待たせしました、さぁ、私が背負って行きます」

安心させるように笑顔を見せる豊田。

「ありがとう、ありがとう…」

孤立させられて不安だったのだろう。

老婆は涙ぐんで豊田に礼を言った。

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