鉄の救世主(くろがねのメシア)
地面に倒れた男。

豊田は彼を取り押さえようと近づく。

しかし。

「動くな!」

男は素早く身を起こし、鋭く叫ぶ。

豊田の動きが止まる。

…男の手には、拳銃が握られていた。

恐らく緊急危機管理センターからの話にあった、警察署で紛失したというあの拳銃だ。

「…馬鹿な事はやめなさい」

緊張した表情で言う豊田。

如何に戦術自衛隊の隊員といえど、実戦で銃口を突きつけられるのは初めての経験だ。

「へへっ…」

男は自暴自棄な表情で笑う。

「どうせこの国は隕石の災害でもう滅びるんだ…家も家族も全部なくしちまった…もうどうでもいい…もう好き勝手にやらせてもらうさ…」

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